岡田@悩みどころのあわいから
はじめに
陸上部にも多様化という言葉が浸透している。先日、最高裁ではトランスジェンダーのトイレ使用制限についての判決が出た。時代とともに、社会の制度のあり方は変動し、将来的には同性婚や選択的夫婦別姓制度等の導入も近いのではないだろうか。このような多様化を尊重する社会における制度のあり方や問題との向き合い方は、この九州大学陸上部という小さな組織も例に漏れず当てはまる。この一年間、運営に携わる中で一番悩ましい問題であったともいえる。そこで、今回は、最後のブログを書くに当たって、自分の経験から得たことを記し、読者が既に経験したこと、今後経験することを示唆し、様々な悩みどころを一緒に考え、何かしら得るものがあれば喜ばしい。
1.陸上の悩みどころ
Q.Aは陸上部に所属している。しかし、高校生のときに出したベストが大学生になり、なかなか更新できず、焦りを覚えている。そこで、冬季練習では課題の筋力強化のためウエイトを取り入れ、食事にも気を付け、健康的な生活を送っていた。けれども、今シーズンに入ってもなかなか記録が伸びない。今後どのように陸上と向き合っていけばよいのか。
多くの方が記録の伸び悩みを経験しているのではないだろうか。問いを出しておいて無責任であるが、僕はこの問いに対して核心を突く答えを持ち合わせていない。僕のPBも高校2年生時のものであり、100mや200mに関しては中学3年生時である。中学時代はそこそこの記録も出て、全中、ジュニオリ、国体と貴重な経験をさせてもらった。しかし、そこからは周りと差が開き、プライドが傷つくことも多々あった。
何をしても記録に直結しないというシーズンを何回か経たが、今となって思うことは、それでも良かったということだ。もちろん、記録に繋がれば文句なしではあるが、毎日コツコツ今できることを自分なりにやってみた結果であれば、それでよいと思う。陸上との向き合い方は人それぞれであり、一義的には解せない。悩み考え、やりきってみるというところに、一つの意義があるということを知ってほしい。
フィールド3年生。自分たちの思うように是非やりきってほしい。3年生は、今の自分に何ができるかをよく考えて行動できていると思う。自信をもって、とにかく最後までやってほしい。僕にはできなかったが、3年生は練習する姿でみんなを引っ張る力が、人柄としての魅力が溢れている。たくさん悩んで、自分なりの答えを信じて最後までやりきった末には、やりきらなければ分からなかったものが待っていると思う。
2.運営の悩みどころ
Q.Aは陸上部全体で競技を盛り上げたいと考え、試合時の応援方法や参加義務を設けたい。しかし、出場しない人も参加するのは負担であるという声や、自分の競技に影響してしまうという意見が出た。どのように考えると良いのだろうか。
僕は副将にも関わらず、3月から休部していた。この一年間、とにかく制度の確立と今まで手薄であった部分を今後にも繋がるよう仕組みとして作っていくことをメインに活動した。そのため、新たな制約や制限、仕組みを課すことも多く、苛立ちや反感を覚えた部員も多いであろう。100人以上いる部活動において、何かをしようとすると、何かしらの不満を持つ人が少なからず現れる。その不満は、制度自体に対する意義の捉え方の差であったり、価値観の差、説明できていない部分、勘違いなど様々である。
ただ、マイナスになることを目的とした活動では決してないということは知っておいてほしい。一人一人が部活を良くしたいと思い、活動しているわけであり、不満を感じても不満だけで終わらないでほしい。また、幹部は権力をもって統治する存在では決してない。直接民主制の陸上部は、部員全員の協力のもと成り立っているものである。換言すると、部員の協力が必要不可欠と言うことである。
ここで、一つの解決方法を呈示しておくと、話合いが重要であるということだ。特に直接話してほしい。話合いというと堅苦しいが、普段から他パート、他学年と様々な人とコミュニケーションをとってほしい。衝突は絶対に起こる。衝突のまま放置していては前に進まない。とにかく議論をし、相手の声も聞いてみよう。意外と勘違いだったなと思うことや、こいつ良いやつじゃないかと思うことが多い。良い部活にしたいという思いは皆同じなのだから、まずは話してみよう。
フィールド2年生。部員が少なくなる中、今後一番大変なのは2年生かもしれない。後輩もでき、少しずつ組織としての、パートをまとめる一員としての自覚も次第に出てくると思う。正直言うと、入部直後はいろんな面で問題を抱えているなと思っていたが、たった一年で目まぐるしい成長をしたと確信をもって言える。次は、より大きな範囲を自分たちで動かして、自分たちの良い色を出してほしい。吸収の早い2年生は、多くの人と関わって、多くの人とコミュニケーションをとってほしい。それが自分たちの成長に良い影響を与えると信じている。
3.大学生の悩みどころ
Q.Aはバイトもしたいし、勉強もしたいし、遊びたいし、恋愛もしたい。大学生になり、やりたいことが沢山あり、また一人暮らしをする中で、生活習慣も乱れてしまった。そのため、所属している陸上部の活動に少し気怠さを感じている。Aはどのようにバランスをとるべきか。
これは大学生の非常に悩ましい点であろう。大学生のときにしかできないことは多くある一方で、できることはある程度限られている。僕はどうなんだというと、ご存知の通り、今まで休部をしていた。個人差はあるが、大学で陸上をするというのは、かなり負担が大きく、何かしら自分のやりたいことを犠牲にする場合がある。休部した者が言うのも何だが、せっかく部活に入ったのであれば、何かを犠牲にしてでも、最後までやりきってほしい。最後までやりきりたいと思うくらいに部活を楽しんでほしい。陸上部にはその楽しさがあると僕は自負している。
僕が休部した理由は、部の迷惑になるというのが大きい。毎日はいけなくとも、いけるときに参加するという手もあったが、毎回欠席連絡が入ることや、中途半端な気持ちで部に所属することは他の人の迷惑になると思い、休部という選択をした。休部を経て、一つ言えるとしたら、休部しても陸上は好きだし、フィールドパートや、自分の知っている人が良い記録が出たら自分まで嬉しく、部活に行きたいという思いは日に日に強くなっていったということだ。それくらいに、陸上部の居心地は良く、楽しい場所である。大学生のうちに多くのことを経験しつつ、その上で陸上も楽しむことを忘れないことが重要であると思う。
フィールド1年生。多くの人が部活に入ってくれ、フィールドパートに入ってくれ、本当にありがとう。これから、4年間の大学生活を送るうえで、フレッシュな気持ちで陸上をするというのは難しいのかもしれない。その時々に、悩みが待っていると思う。ただ、1年生みんなで協力して支えあって、最後まで誰一人として欠けることなくやりきってほしい。大学生でしかできないことはもちろんやりながら、その上で陸上も頑張ってほしい。陸上部は最後までやりきれば絶対に後悔しない楽しい場所だ。大変なことも、しんどいことも、楽しもう。陸上部をそういう場所にしてほしい。
おわりに
大学受験や部活動、趣味等、今まで様々なことを学び、経験してきたと思うが、時間の経過とともに大概のことは忘れていく。大学受験のときに覚えていたことを今ではほとんど覚えていない。しかし、「ものごとの考え方」は年々蓄積し、忘れることはないものであると思う。様々な経験、出来事を通じて悩み考えていく中で、ものごと考え方は自分を形成し、成長させてくれる。まさに、社会に合わせて変化する法のようなものだと思う。是非、後輩には大学生のうちに目一杯の経験をし、知らないことを知るとともに、悩んで悩んで悩んでほしい。ただ、これが困ったことに、一定の期間を通じて行わなければ、なかなか身に着くものでもないため、是非、根気強く、諦めず、自分を信じて進んでほしい。
悩みどころは至るところに存在する。しんどい練習をする際に、嫌々やりながらも、やりきったときの達成感や成長を感じるように、悩むたびに自分は成長しているのだなとプラスに捉えてみるのはどうだろう。みんな、なんだかんだ言って、しんどい練習が好きでしょう。
フィールド4年生。さぁ、最後の試合だ。個性的なメンバーすぎて、未だに僕はみんなのことがよく分からないが、先輩の意地を見せて、2日間悔いなくやりきろう!楽しむぞ!
フィールドパート。フィールドから全体を盛り上げていこう!全力で楽しもう!
補遺
今回のブログ内容に関して、考えることは各々異なると思う。しかし、それでよいと思う。少しでも、考える契機になり、何かしら得るものがあれば、喜ばしい限りである。
また、今回の七大戦で、14年間続けた陸上競技も最後である。本当に多くの方に支えていただき、かけがえのない貴重な経験や出会いを得た。この場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました!
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